就学イメージ

就学先を決めるまで

ここでは発達の気になるお子さんの就学先を決定するまでについて、自身の経験をもとにまとめました。
日程や詳細は各自治体によって異なりますので、あらかじめご了承ください。

目次

早期支援の重要性

平成25年、学校教育施行令の一部改正に伴い、文部科学省から「障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について(通知)」が出されました。

それに伴い、各自治体では教育指導課等に「教育支援委員会」などの設置が進み、新たに就学を迎える児童に対する支援教育の在り方を、個別に専門家が評議することで、個々に応じた就学先を決定していく流れになってきました。

発達が気になる子どもが、どのような学校環境で学んでいくことがより良い発達につながるのか、保護者ともに考えるための相談場所の提供や保護者向けの就学講習会などが開かれています。

特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議 (文部科学省)

就学先決定までの流れ

~年長児になったら~

以下は大まかな流れですが、教育巡回相談を申し込んだ後は、すべて並行して実施していくような感じでした。
順番が前後したり、必要のない項目がある可能性もあります。

  1. 幼稚園・保育園を通して「教育巡回相談」を申し込む
  2. 必要に応じて発達検査を受ける
  3. 就学先候補の学校へ見学や相談に行く
  4. 新入生児童健康診断兼就学通知書が届く
  5. 就学時健診の実施
  6. 教育委員会より就学先について再決定の通知が届く

教育巡回相談(5~9月頃)

教育委員会に保護者の希望を伝えてくれる、窓口として担当してくれる相談員の方との相談になります。

5月くらいから始まり、9月には希望を決定、という流れですが、保護者の希望と教育委員会の判断に相違がある場合などはこの限りではなく、就学先が決まるまで担当して下さいます。

〈内容〉

幼稚園や保育園に巡回相談員が子どもの様子を見に来てくださいます。
その後、保護者との面談時間が設けられており、子どもの発達の特徴や、今後の就学先決定の流れ、担当窓口などについて詳しく教えてくださいます。

一度申し込めば、気持ちの整理がつくまで何回でも相談に乗ってくださいます。

ただ、就学先についてどこがいい、というような相談員からのコメントは控えているようでした。

学校見学・相談

どの学校も、見学や相談は受け入れてくれます。

必ず電話で先に問合せをし、学校側の予定やスケジュールを確認してから予約を取るのが確実です。
面談を申し出たい場合には、電話予約は必須です。

地域によっては、地域一斉公開週間と称して、地域の学校が授業の様子を一般に公開する期間が設けられており、その間は自由にいろんな学校を見て回れます。
春頃と秋頃が多いようです。

「ここに我が子が通っていたら」という目線で、見学すると良いと思います。

新入生児童健康診断兼就学通知書

9月頃、就学先が決まっていても決まっていなくても、自宅に届く通知です。

自宅がどの地域の学校の校区なのか、また就学時健診の日時が書かれています。

就学先がまだ決まっていない場合でも必ず届きますが、決定版ではありませんが、捨てないようにしましょう。
案内に記載の就学時健診は、基本的に記載の場所で受けることになります。

就学時健診

就学先がどこであっても、基本的に就学時健診はここに記載の一斉健診を受けることになります。
特別支援学校にすでに就学が決定している場合などには、地域での健診ではなく学校独自の健診を受けることになるなどのケースもあります。

また、就学時健診は絶対その日、その学校で受けないといけないわけではありません。
体調不良の場合もあるでしょうし、発達の問題で一斉での健診が不安な場合などには、個別に小児科などで対応できる場合もあります。

不安なときは各学校に対替え措置について問い合わせてみる良いと思います。

4つの就学先

就学先を選ぶ、というのは、以下の4つの枠組みの中から、どの形の支援教育を受けるのか、を選ぶことです。

まずは4つの就学先の特徴について、良く知っておく必要があります。

  • 通常学級
  • 通常学級+通級指導
  • 特別支援学級
  • 特別支援学校
内閣府 特別支援教育の対象の概略図
内閣府 特別支援教育の対象の概略図(義務教育段階)より引用

通常学級

通常のクラスにも支援員さんが付いてくれることもあります。

支援員さんの人数は、学校によって様々で、手厚く見てくれる余裕のある学校から、人数がギリギリで通常学級ではほとんど支援が期待できない学校まで、様々です。

お住まいの地域の学校事情については、見学に行ったり、具体的にこういった支援が可能なのかどうかを、直接確認するのが一番確実です。

同じ市内であっても、学校によって本当に様々です。

通常学級+通級指導

‣概要

普段は通常の学級に所属しており、決められたコマ数のみを「通級クラス」で障害に応じた特別の指導を受けることになります。

通級クラスは、在籍する学校にあることもありますが、多くは同じ市内で通級クラスを開設している学校に出向いて指導を受けることになります。

具体的には以下のようなクラスがあるようです。

  • ことばの教室
    構音障害、吃音、言語発達遅滞などの子どもたちが通う教室。
    言語能力の障害やコミュニケーションの困難さの改善・克服を目指す指導を図り、子どもたちの主体性を育む指導方法の改善と集団生活の適応に努める。
  • きこえの教室
    きこえに障害のある子どもたちの実態に応じた聴覚活用や補聴器装用と管理に関する指導の充実を図り、コミュニケーション能力の向上と集団生活の適応に努める
  • LD・ADHD教室など
    それぞれの障害の特性に即した指導内容を選定し、個別指導や小集団指導を組み合わせたり、指導方法を工夫しながら、学習面や行動面の困難さを改善または克服する指導、各教科の補充指導に努める

‣その他

  • 通級にあてる時間数などは、教育委員会が決定する。
  • 在籍学校とは別の学校の通級クラスの通う際には、基本的に送迎が必要。
  • 通級クラスで学習する時間に設けられている在籍クラスでの授業は受けられないが、欠席扱いにはならない。

特別支援学級

‣概要

地域の学校内にある(もしくは新規開設する)特別支援学級で、大きく以下の2種類あります。

  • 知的障害特別支援学級
    子どもたちの発達段階や障害の特性等を適切に把握しながら、基本的な生活習慣の確立を図るとともに、ことばの理解や表現、数量の処理など、日常生活や社会生活に必要な技能や習慣が身に付くように努める。
  • 自閉症・情緒障害特別支援学級
    対人関係の改善や言語コミュニケーション能力を高めることを基本に、運動機能、感覚機能の調和的な発達を図りながら、人との関わりを円滑にすることを大切にした指導に努める。

もし、お住まいの地域に、現状として特別支援学級がない場合でも、学校は開設が義務付けられています。

‣1クラスあたりの定員

定員は法的には15名以下、多くの場合はそれ以下に設定されています。
わたしの住む地域では1クラス定員8名でした。

‣特徴

また、全授業時間の半分を超えない範囲で、通常学級との交流時間が設けられています。
例えば、図工や体育、音楽、給食などは、通常学級で過ごす、などです。
交流の時間は、個々の生徒の事情に応じて、0~49%の範囲で年単位で決定します。

特別支援学級においては、個人の支援教育計画書を先生方が立てる必要があり、その計画書に沿って授業を進めていくことになります。

特別支援学校

‣概要

小・中学校などに準ずる教育を行うとともに、併せて子どもたちが障害に基づく種々の困難を改善・克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養う事を目的とした学校。
このため、特別支援学校の教育課程は、各教科、道徳科、特別活動、総合的な学習時間のほか、自立活動という特別の指導領域を加えて編成することになっています。

‣1クラスあたりの定員

定員は1クラス6名(教師2名)

‣地域の学校との違い

特別支援学級との大きな違いは、授業時間です。
いわゆる学習に割く時間は、地域の学校に比べて圧倒的に少ないです。

学力を付ける地域の学校、
生活力を付ける支援学校、
というイメージです。

支援学校では生活の中で、学習を進めることで、生活に必要な知識や技能を確立していく、という指導スタイルのようです。

また、学校生活における小さな行事、例えば内科健診や歯科検診、聴力・視力検査など、地域の学校ではぶっつけ本番でするような事に対しても、練習の時間が設けられるなど、子どもたちが自信を持って取り組めるような工夫がなされています。

遠足に行くなどの大きな行事では、みんなで歩く練習や本番を迎える前にイメージを膨らませるような活動が多く取り入れられます。
その中で、行事がより印象に深く残ったり、興味を持って取り組むことで、学習の底上げができるようになります。

その結果、いわゆる国語や算数などの授業にかけられる時間は少なくなってしまいます。

机上での学習だけでは補填できないような、経験や自主性、子どもたちの自信を育むための時間や機会は多く設定されています。

就学先を、支援学校かその他の学級で迷う際には、これらのことをよく理解し、学校という場所に何を求めるのか、を考えることがキーになります。

その他特記事項

  • 就学先区分は変更できる
    年度単位で、例えば特別支援学級から通常学級などの変更ができる。
    支援学級から支援学校などへの変更も可能だが、再度教育委員会の評議を受ける必要がある。
  • 教育指導課では就学後も支援教育についての相談を受け付けてくれる

就学に向けてのチェックリスト(参考)

療育の先生から頂いた、就学に向けてできておいた方が良いと思う、身辺自立リストです。
支援学校に行く場合などには、この範囲ではありませんが、参考にしてみてください。

学習面では、わたしの住む地域では
・ひらがな50音の読み書き
・20くらいまでの数の音唱と10までの数の概念
と学校からの書類にありました。
わたしたちの子どもの時とは大きく違うのですね・・・

一人で着脱(制服の上着、スカードのアジャスターなど)
朝の支度(準備と片付け)
気温や機会に応じて服を選ぶ
排泄時の一連の動作
(紙の使用・カギの使用・水を流す・手を洗う)
和式トイレの使用(男子用トイレの使用)
ぞうきんを絞る
牛乳パックを開ける
お盆に乗せて運ぶ
促されなくても自分から家事やお手伝いをする
10お手伝い(役割を週に1度程度、毎回する)
11ポケットハンカチの使用
(手の水切り・ハンカチの使い方・たたみ方)
12袋を持って歩く
13傘の使用
(開閉・さして歩く・閉じて持ち歩く・くるくるパチン)
14交通ルール(左右の確認)
15一人で学校に行く(通学路を覚える)

就学先選び ~ここだけの話~

こちらでは、わたしが就学先選びの際に入手した、公ではない情報が含まれます。
一般的に当てはまらないことも含まれる可能性をご了承の上、参考にしてください。

  • 発達指数(DQ)的区分
    通常学級・・DQ70~
    特別支援学級・・DQ50~
    特別支援学校・・DQ~50

発達指数でざっくりと分けると、だいたいこのような基準で、評議会では検討されるようです。
従って、この基準に合致しない学校を希望する場合、判定結果と保護者の希望する学校に相違が生じる可能性が高い、と言えます。

ただ、障害の特性や、希望する理由など、教育委員会が納得できれば希望は通ると可能性があると思います。

判定が希望の学校ではなかった場合、交渉する余地はあります。
判定が出る前には、判定は覆せない、と伝えられることが多いですが、絶対に無理ではないのです。
交渉にはたいへんな労力と精神力が必要になるのは確かですが、交渉のがんばり次第で、判定が覆った、という体験談も聞きます。

  • 学校での個別面談で見えること

上記はあくまで発達指数に応じた支援が得られる場合、と考えた場合です。

実際に通うかもしれない学校側との面談ではぜひ、具体的にどういったことに対して支援してほしいのか、を伝えてみてください。

その結果の返答が、そのまま約束されるとは限りませんが、学校側の支援教育に対する姿勢が見えるのは確かです。

娘の時、地域の特別支援学級も選択肢に入っていました。
ですが、申し出た支援のほとんどに、「約束できません」「難しい」との返答で、代替え法の提案などもありませんでした。

面談後はとても悔しい思いをしましたが、そうと分かっている学校に娘を通わせたくない、そういう姿勢が分かってよかった、と最後には思えるようになりました。

逆に、支援学級でも、本当に痒い所に手が届くような支援教育をして下さる学校もあります。
支援学校と迷ったけれど、ここなら!と思える学校と出会える可能性もあるのです。

就学先を迷われている場合には、ぜひ学校との直接面談を申し出られることをお勧めします。

  • トイレのお話

就学を迎えるころに、トイレトレーニングが完了していない場合。
また、食事などの身辺自立の課題もそうですが、
地域の学校では基本的な生活面に対する指導は期待できないことが多いです。

地域の学校でも、和式トイレの使い方のレクチャーは、新一年生向けに集団での指導があります。
ですが、個別に手伝ってはくれません。

特別支援学級における、トレイトレーニングは担当の先生によりけりで、積極的にトイレトレーニングをして下さる先生と、そうでない先生がいらっしゃるのが現実です。

一方、特別支援学校では、真剣にトイレトレーニングをして下さいます。

ここでも、学力を養う地域の学校と、生活力を養う特別支援学校、という違いが出てきます。

『トイレトレーニングが完了しないまま、特別支援学級に就学したら、オムツを交換してくれるだけだった』

あるいは

『特別支援学校に就学したけれど、地域の当別支援学級に行けばもっと学力がついただろうのに』

という体験談もあります。

我が子が、どの学校に就学すればより成長が見込めるのか・・
これを見極めるのはとても難しい作業になりますが、現状、子どもにどんな支援を望むのか、それはどの学校で安心して任せられるのか、これを面談や見学を重ねて決めていくのが、就学先選びの要になるように思います。

  • お友達効果

子どもに何かを教えてくれるのは、大人だけではありません。

周りのお友達が良い見本となって、それを上手く真似して自分の力に変えられる子どもさんもいらっしゃいます。

通常学級との交流時間や、通常学級に在籍する大きなメリットの1つが、このお友達効果(ロールモデル)です。

支援の内容のみならず、お友達と関わるのが好きなお子さんには、「クラスメイト」が大きな成長に結びつく可能性もあります。

教育現場における合理的配慮とは
場面緘黙症について
娘の成長と療育の記録

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