障害・福祉

わたしが死んだら、この子はどうなるの?

障害のある子の将来を考える

先日、娘が在籍する特別支援学校の保護者向けの講演会を拝聴しました。
そのテーマは「障害のある子の親亡き後」のお金にまつわるお話です。

講演会の内容そのものを掲載することはできませんが、
なぜ今から考える必要があるのか、
それを中心に綴っていきたいと思います。

目次

  1. 衝撃的だった、障害のある子の「親亡き後の話」
  2. 障害を持つ子どもの年代別に考える必要がある
    ~未成年期・成年期・親の死後~
  3. サポートが必要でも障害児に「成年期」はやってくる
    1. 成年の定義
    2. 障害児における「成年」の違和感
    3. 現実問題として困ること
  4. 法定代理人とは
  5. 成年後見制度とは
  6. 2022年4月 成年年齢が18歳に引き下げられる
  7. 障害のある子の、「親の死後」を考える
  8. まとめ

1.衝撃的だった障害のある子の「親亡き後の話」

講演会では、障害のある子どもの親が亡くなったあとのお金の話を中心に、現在の法制度とわたしたち親が知っておくべきことなどを分かりやすくお話しくださいました。

講演会の講師を務めてくださったのは、
一般社団法人 日本相続知財センター本部 専務理事
鹿内幸四郎先生。

ちなみに講演会の内容は、
鹿内先生の著書(以下)に詳しく載っていますので、ご興味のある方はそちらをぜひご覧下さい。

障害のある子が「親なき後」も幸せに暮らせる本 [ 鹿内幸四朗 ]
価格:1,760円

鹿内先生もダウン症の娘さんを持つ親御さんの一人です。

最愛の娘さんのために、お金の専門家として最善の策を模索し実践された、愛と知恵の詰まった対策が、著書ならびに講演会で紹介されています。
講演会を通じて、同じく障害のある子の親として、大きな知恵と覚悟をもらいました。

お金の話、これはとても大事だけれどなかなか他のご家族と踏み込んだ話はしにくいものです。

ですが、我が娘のように知的障害を持つ子どもたちも、将来成人を迎え、やがてわたしたち親は、年齢順だと先に逝ってしまいます。

今は子どものサポートができているけれど、この先も今と同じようにサポートし続けられるのでしょうか。

答えは明白ですよね。
人は誰しも老いて死を迎えます。

そこで、そもそもわたしたち「親」には、
『血縁関係でいう親』という立場と、
『法的な親』という立場があることを、まず理解しなければならないのです。

2.子どもの年代別に考える必要がある 

~未成年期・成年期・親の死後~

子どもの成長過程イメージ

子どもが生まれた瞬間から、わたしたちは「親」になります。

抱っこの赤ちゃんの時代、
泣いたり笑ったり、感情が忙しない幼稚園時代、
どきどきの就学を迎え・・
ずっと、ずっとその子の成長を見守り続けてきました。

なのでわたしたちの心は、いつまでもこの「未成年期」にあるような気がしました。

「いくつになっても心配なのよ」
母がよくそう言っていたのが、今なら身に沁みて分かります。

そしてとりわけ障害のある子どもは、いつまでもサポートが必要なことが多く、俗にいう『親離れ』なんて日が来ることはないのかもしれません。

ですが、ここでまず気付く必要があるのが、次項。

3.サポートが必要でも障害児に「成年期」はやってくる

成人式イメージ

成年(成人)という境を、わたしは自分が成人を迎えた際、あまり強く意識しなかったのですが、

  • お酒・タバコが解禁
  • 国民年金に加入させられる
    (収入がないので免除手続きに行かなければ!)

この程度の認識しかなかったように思います。

では「成年」って、具体的にはどんな権利を持っているのでしょう?

3-1.成年の定義

まずは成年の定義から。

成年(せいねん)または成人年齢は、法的には、単独で法律行為が行えるようになる年齢のこと。

ウィキペディアより

平たく言うと、親の許可なしに、例えば携帯電話の契約をする、賃貸住宅の契約をする、銀行口座を開設する、など自己の責任において契約事(法律行為)交せるようになる年齢、ということのようです。

そしてもう一つの意味がわたしたちには重要で、
親権に服さなくなる年齢、という解釈です。

これは住む場所、進学や就職などに際して、必ずしも親のいう事を聞かなくてもよい年齢、と解釈することができます。

一人の大人として尊重される権利を持ち、
親といえどもその人の生き方や選択を不用意に妨げてはならない、ということになります。

3-2.障害児における「成年」の違和感

成年の定義は分かりましたが、わたしはこれをそのまま我が子に当てはめて考えることができませんでした。

個人的にすごく違和感があったのですが、
そもそもこの成年の定義、知的な遅れがないことが前提にされているように思います。
なのに成年年齢に達した途端に、
『はい、今日から成人ですね』となるわけです。

(もちろん成年としての様々な権利を享受することに大きな意味もありますが、後に登場する成年後見制度を利用した途端に、選挙権を奪われる、など多くのジレンマが付きまといます)

そうなると、
わたしたち親子の関係が、今までと同じようにはいかなくなってしまう、というのが問題なのです。

成年を迎えるまでは当たり前にできていた、「親としてのサポート」。

これが子どもが成年に達した途端、
成年は親権に服することなく、なんでも一人でできる年齢であるとされ、
わたしたち親は法律上、「親としてサポートすることができなくなってしまうわけです。

親としてのサポートにもいろいろあります。

血縁関係の親として、法律に関係なくできるサポートとして
身の回りのこと、生活面など、「実際の生活」にはほとんど影響がないと思います。

ですが、法律上では、「この子の親です」と言ったところで、
ご本人様でないと』と言われる場面が出てくることになります。

成人したら本人が手続きをするイメージ

この『ご本人様でないと』が想定されるのって、ほとんど「お金」が絡むことなんです。

上述の一人で契約ができるという例に出ていたことすべて、
携帯電話も賃貸住宅も、そして銀行口座も。
「お金」ですよね!

3-3.現実問題として困ること

障害のある子が、将来自分のお金を管理できるかどうか、についてはその子が持つ障害の程度にもよりますが、知的な遅れのある人にとって、金額の大きい買い物をしたり、リスクの高い契約を結ぶ、などというのは、より慎重になる必要があります。

そして生涯に渡って、この「お金の管理」をせずしては生きていけない事実があります。

それなのに、子どもが成年に達した途端に、
親が子どもに代わってお金の管理をすることができなくなる
のです。

例えば、
賃金や工賃を受け取るために、子ども本人の名義の銀行口座が必要となった時、
「ご本人様」が銀行窓口で口座開設手続きをする必要があります。
本人が稼いだお金は、本人名義の財産になるわけです。

これは障害年金の受け取りであっても、本人名義の口座である必要があります。

親だからと言って親名義の口座に振り込んでもらうことはできません。

また、銀行口座の預金から、大きな額の振り込みや引き出しをする際にも、「ご本人様」である必要があるのです。

福祉施設等と契約を結ぶ際にも、
法律上「ご本人様」もしくは「法律で認められた代理人=法定代理人」が手続きをする必要があります。

4.法定代理人とは

代理人イメージ

法定代理人(ほうていだいりにん)とは、代理人の一種で法律により代理権を有することを定められた者のことである。

ウィキペディアより

法定代理人、と言われると、
なんだかすごい人のように感じてしまいますが、

実は未成年者における法定代理人とは、「親権者」なのです。

つまり、わたしたち親です。

では成年になるとどうなるか、というと、

法定代理人には、以下のものがある。

親権者(親権を行う者) – 本人が未成年者の場合
未成年後見人 – 本人が未成年者で、親権者となるべき者がいない場合
成年後見人 – 本人が成年後見開始の審判を受けた場合(成年被後見人)
代理権付与の審判がなされた保佐人 – 本人が保佐開始の審判を受け(被保佐人)、かつ保佐人に代理権が付与された場合
代理権付与の審判がなされた補助人 – 本人が補助開始の審判を受け(被補助人)、かつ補助人に代理権が付与された場合
不在者財産管理人
相続財産管理人

ウィキペディアより

ずらっと並んでいますが、
一番上の「親権者」以外は、聞きなれない言葉が並んでいて、いよいよすごい人たちのような気がしてきます。

この聞きなれないすごい人たちしか、成年を迎えた我が子のお金の管理を、法律上行うことができない、ということなのです。

5.成年後見制度とは

成年後見イメージ

前項で出てきた、成年の「お金の管理」を扱うための法制度が、今回鹿内先生のご講演および著書の内容の柱でもあった「成年後見制度」なのです。

Q1成年後見制度せいねんこうけんせいどってどんな制度ですか?

A1認知症にんちしょう知的障害ちてきしょうがい精神障害せいしんしょうがいなどの理由で判断能力はんだんのうりょくの不十分な方々は,不動産や預貯金などの財産を管理したり,身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約けいやくを結んだり,遺産分割いさんぶんかつの協議をしたりする必要があっても,自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また,自分に不利益な契約けいやくであってもよく判断ができずに契約けいやくを結んでしまい,悪徳商法あくとくしょうほうの被害にあうおそれもあります。このような判断能力はんだんのうりょくの不十分な方々を保護し,支援するのが成年後見制度せいねんこうけんせいどです。

法務省ホームページより

法律で定められているとは言え、
上述の通り、認知症、知的障害、精神障害のある人たちを「判断能力の不十分な方々」として一括りにされているため、細かい配慮というか個々の状況を鑑みて、という視点に幾らか欠けている内容になっていることを問題だとして、鹿内先生の著書にまとめられています。

先述した通り、子どもが成年を迎えて初めて、この「お金の管理」問題が浮上するため、子どもが成年を迎えてしまってからでは手遅れになる事柄が多数出てきます。

そのため、
親は「法定代理人」でいられるうちに、
子どもが未成年のうちに、
子どもの将来のために、できる限りの準備をしておきましょう、というのが鹿内先生のご経験と知識と娘さんを想う愛情が詰まった著書で、具体的な対策が紹介されています。

障害のある子が「親なき後」も幸せに暮らせる本 [ 鹿内幸四朗 ]
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6.2022年4月 成年年齢が18歳に引き下げられる

成年年齢引き下げで18歳で成人へ

さて、次に2022年4月に民法が改正され、成年年齢が現行20歳から18歳に引き下げられるという話題です。

現在、選挙権が先行して、18歳以上から投票に行くことができます。

2022年からは、18歳以上が「成人」として扱われるようになり、
飲酒・喫煙を除いて(従来通り20歳から)、具体的には以下のような権利を持つことになります。

*その他事項の年齢(18歳になるか20歳のままか)については、
以下法務省の資料をご覧ください。
法務省「成年年齢の引き下げに伴う年齢要件の変更について

一人で有効な契約をすることができる年齢という意味と,父母の親権に服さなくなる年齢という意味があります。
  成年年齢の引下げによって,18歳,19歳の方は,親の同意を得ずに,様々な契約をすることができるようになります。例えば,携帯電話を購入する,一人暮らしのためのアパートを借りる,クレジットカードを作成する(支払能力の審査の結果,クレジットカードの作成ができないことがあります。),ローンを組んで自動車を購入する(返済能力を超えるローン契約と認められる場合,契約できないこともあります。),といったことができるようになります。
  なお,2022年4月1日より前に18歳,19歳の方が親の同意を得ずに締結した契約は,施行後も引き続き,取り消すことができます。
  また,親権に服することがなくなる結果,自分の住む場所(居所)を自分の意思で決めたり,進学や就職などの進路決定についても,自分の意思で決めることができるようになります。

法務省ホームページ 民法改正「成年年齢関係」Q&Aより抜粋

ちなみに女性の婚姻可能年齢は、現行16歳から18歳に引き上げられます。

また、犯罪にまつわる年齢区分は、少年法の管轄になり、同じく18歳に引き下げるのかについては今まだ議論中のようです。

この他、児童の年齢については、各種法律が個別に定めている部分もあり、取り扱う問題によって法律が変わるため複雑になります。
詳しくは内閣府データ 「各種法令による青少年の年齢区分」をご覧ください。

本題に戻りますが、
18歳というと、高校3年生の間に成年を迎えるわけです。

特別支援学校でも、高等部3年生で「成年」を迎え、学校に通っているにも関わらず、法律上の親として親権を行使できなくなってしまうのです。

もし、高等部を修了して、福祉施設に入所するタイミングより前に「成年」を迎えてしまったら・・

細かい修正など、今後議論されていくとは思いますが、これは想像しただけでもう大変なことだと思います。

2000年に発足した成年後見制度ですが、
現在ほんの少しずつ、制度を変えようという動きがあるのが希望です。

2019年には、最高裁判所が後見人には親近者がふさわしいとし、後見人の交代や追加についても柔軟に対応すべきとする提示がなされました。

また、2021年2月、つい最近ですが、本人利益を前提に、成年後見制度における認知症患者の預金を親族が代理出金することを容認する考えが、こちらは全銀協から出されました。

色んな方面で、見直されてきつつある成年後見制度。

ですが、その詳細を知っている人がどれだけいるかというと、あまり周知されていないという事実があります。

成年を迎えた知的障害者をも対象にしたこの制度、きちんと理解して、今できる対策があるのなら、しておきたいものです。

7.障害のある子の、「親の死後」を考える

親の死後、障害のある子どもが困るとしたらイメージ

前項までは、障害を持つ子が成年を迎える前と後のことになりますが、こちらでは親が亡くなった後のことを考えてみたいと思います。

年齢順に寿命が尽きるとしたら、
わたしたち親は子どもよりも先に逝ってしまいます。

ここで考えないといけないのが、わたしたち親が持つ「財産」です。

ここで考えないといけないと言っても、死んでからではどうしようもないので、来るべき時に備えておく、という意味ですね。

また、わたしたち親に判断能力が欠けてしまったとき。
こちらも同じく、そうなってしまってからでは自分でどうすることもできないため、備えておく必要があります。

財産の相続に関しても、法律で様々なことが定められています。
相続関係の法律は、民法で定められた「相続法」になります。
こちらも40年ぶり、平成30年に改正されています。

改正された相続法については、以下をご覧ください。
政府広報オンライン
約40年ぶりに変わる“相続法”!相続の、何がどう変わる?

一般的に相続の問題、と聞くと、
その取り分をめぐっての相続争い、とか、相続税というイメージが強いですが、子どもが障害を持っていて、判断能力がないとされた場合には、実に様々な問題や高いハードルが潜んでいるというのです。

実際の相続に必要な手続きに始まり、
相続した資産の管理、
文字にしてしまえば、たったこれだけですが、その内容は法律に精通していないと理解や手続きが難しいものがほとんどです。

自分たちが死んだ後で、
残された子どもたちが困らないように、
残した財産で苦しまないように、
親が生きている間にできること。

これらについても
鹿内先生の著書に詳しく書かれています。

障害のある子が「親なき後」も幸せに暮らせる本 [ 鹿内幸四朗 ]
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8.まとめ

親亡き後も子どもたちが幸せでありますように

子どもが生まれた瞬間から、わたしたちは親になります。
子どもが障害をもっていようがいまいが、親は死ぬまで親です。

いろんな家庭があり、家族があり、事情がある中で、
「障害のある子の親」として考え、備えないといけないことがあるのだと気付かせてもらいました。

わたしたち障害のある子を持つ親は、この手で我が子を守るために、今後も必要な情報を集め、今できることがないか探し続ける必要があります。

それはとても大変で、かつ一人では限界があります。
だからこそ、仲間と情報を共有できることが貴重で、人との繋がりの尊さを感じずにはいられませんでした。

ある講演会では、
子どもの将来のために、残せる財産はお金ではなく人脈である、
と仰っていた先生がいらっしゃいました。

またある障害を持つ人の言葉に、
障害者の自立とは、自分で何でもできる力ではなく、
自分を助けてくれる人の存在やツールをどれだけ持てるか、である
というのを思い出しました。

今後、現在の法制度がどのように変わっていくかは分かりませんが、子どもの幸せを願う親の想いは変わりません。

障害があるからと言って、
親が亡くなったからと言って、
その子の幸せが脅かされるなんて、絶対に嫌です。

一人でも多くの方が関心を持ち、行動することで、より良い未来がやってくると信じて、この記事のまとめにしたいと思います。

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