子どもの視力検査
療育日記

子どもの視力を正確に測る「サイプレジン検査」

小学校に入学するとすぐにやってくる健診の数々。

内科健診
歯科検診
そして眼科健診。

今回は、学校の視力検査で「要検査」の紙をもらってきた場面緘黙症の娘が、
眼科でサイプレジン検査を受けた時の話題です。

たかが視力検査、されど視力検査

視力検査って、Cマークの隙間がどちらを向いているか、それを答えることで測りますよね。

隙間が見えるか見えないか。
ただそれだけを伝えるものですが、場面緘黙症の娘にはなかなか高いハードルです。

声に出して右とか左とか言えなくても、指差しで答えることもできるのですが、娘は緊張で動作も固まってしまうため、そもそも検査できるのかどうか不安でした。

娘の通う特別支援学校では各種健診の前に、練習する機会が設けられます。
その甲斐もあって、学校での視力検査を実施することができたのですが、その結果は「要検査」。

普段の生活で見えにくそうにしている様子はあまりなかったのですが、我が家は近視家系ということもあって、上の子が通っている眼科を受診することにしました。

初回の視力検査

視力検査イメージ1

学校でもできたし、大丈夫!と声掛けを続けたところ、視力検査もなんとか乗り切りました。

指差しをするきっかけを作るために、
「どこが空いてる?せーの!」の声掛けと肩をトンと叩く合図をし続けました。
検査が終わる頃には、喉がカラカラでした・・

そして「分からない・見えない」というのが、言いづらいようでした。
普段からよく分からないことや、自信のないことは
「やらない(やれない)」という選択肢を取ることが多い娘。

視力検査でも
「分からない=良くないこと」という意識があったようで、
チーンと固まってしまうときは恐らく見えていないのだと思い、
「分からなくてもいいんだよ。分からなかったら首を振って」という声掛けも欠かせませんでした。

そんな感じでなんとか親子で検査を乗り切りました。
帰宅するときには、ヘトヘトでした。

視力検査の結果としては、
0.5~0.8程度の視力が出ているので、まだメガネはいいでしょう、との結果。
半年後にまた来てください、と言われました。

ひとまず安心!

2回目の視力検査

視力検査イメージ2

初回から半年ほど経ってから、再度眼科を受診。

初回の視力検査を乗り切ったので、油断していました。

特に事前に説明することなく、視力検査に臨んだことも響いたのか、
この日はなんだか調子が悪く、のぞき込めば気球が見えるあの機械での検査すらうまくできませんでした。
検査技師さんがボタンを押す前に、視線をそらせてしまっているようでした。

そしてあの「C」のあいている向きを答える検査も、
こちらは前回と同じように合図をして親子で臨んだのですが、
なんだか適当に指をさしていたような感じで、初回よりも視力が大幅に低下したような結果でした。

先生は少し考えてから、
「1ヵ月後に、目のピント調節機能を一時的に低下させる目薬を使った検査をしましょう」と。

これが『サイプレジン検査』でした。

サイプレジン検査とは

子どもの目は、ピントを調節する力がすごく強いのだそうです。
なので実際の度数以上に、このピント調節機能を使って見えているケースがあり、通常の視力検査では隠れた遠視や近視を見落としてしまう可能性があるとのことでした。

2回目の視力検査の結果が、初回よりもかなり低下していたんだと思います。
視力検査の結果が、単に娘のやる気の問題なのか、
それともピント合わせの調子に左右されているのか。

やる気の問題なら、2回目の結果が示す視力低下は認められず、
ピント合わせの調子が悪いのなら、初回の視力検査の値が本来の度数ではなかったことになります。

そのため、
このピント調節の機能を一時的に低下させる目眼薬「サイプレジン」を使って、
本来の視力を測るための検査、
これがサイプレジン検査というものでした。

一般的に10歳以下の子どもに適用する検査法のようです。

★サイプレジン検査を受ける前の注意点

‣ピント調節機能を低下させると、普段よりも見えにくくなり、まぶしく感じる
‣点眼薬の効果は1~2日続くので、当日翌日はイベントのない時に来院
‣点眼をしてから検査まで1時間はかかるので、時間に余裕をもって来院

サイプレジン検査当日

そして1か月後。

前回の視力検査から1か月経っているとは言え、今回は更に長丁場の検査・・・
連れて行く親も、なかなか気合が要ります。

学校の行事で、給食を食べずに早く帰宅する日に受診することにしました。

時間がかかる検査で、少し負担感もあるようなので、
そして1番の心の声として、
「今回は検査を無事に乗り切ってほしい」と切に思ったので、
好物のMのハッピーセットを食べてパワーチャージ。

★サイプレジン検査の流れ

サイプレジン点眼前に気球が見える機会で度数を計測

サイプレジン点眼

10分後に追加点眼

その1時間後に再度気球が見える機会で度数を計測

今回はCの向きを答える視力検査はなく、
気球が見える機械の検査のみでしたが、なんとか視線をそらすことなく検査をクリア。

サイプレジン検査の結果

「隠れた遠視と乱視」が見つかったのです。

「遠視?ですか??」

思わず先生にそう聞いてしまいました。

我が家の家系に遠視の人はいなくて、わたし自身遠視というものを理解していませんでした。

先生曰く、近くも遠くも見にくいのが遠視とのこと。

じゃあ一体どこが見えてるのか??

もう少し説明を聞いてみると、
近くを見るにも遠くを見るにも、ピントを調節する必要があり、
近くを見る時の方が、ピントを合わせるのが難しい状態が遠視、だそうです。

ただ、我が家は全員近視の家系なので、
遠視は将来的に良くなる可能性が高く、メガネはまだ必須ではないと言われました。

ただ、乱視もそこそこ持っているようで、
この乱視による文字に見にくさ、これは結構しんどいものです。
わたし自身、強度の近視と乱視で、文字が歪んで見えることをよく知っています。

そして娘の文字を覚えるスピードの遅さ。
これ、もしかして乱視の影響もあったりして?と思い、メガネを作ることに。

メガネを買いに

メガネの処方箋をもらって、いざメガネ屋さんへ。

子ども用の眼鏡は、かわいいものがたくさんあります♪

しかしここでも場面緘黙症は発動してしまいます。

選べないんです。

きっと、「これがいいな」「これもかわいいな」と
心の中では思っているはずなのですが、
手に取ることやかけた姿を鏡で見ること、すべての動作がストップします。

店員さんは良かれと思って、たくさん声をかけてくれます。
選びやすいように、アドバイスをしながら傍についていてくれます。

しかし娘にとっては、店員さんがピタリとついている状況こそ、
緊張がマックスの状態なんです。

そして親のわたしたちは、どちらの気持ちも立場も分かり、これも辛いです。
娘に選びなさいと言っても解決しないし、
店員さんを無下に遠ざけることもできない。

なので店員さんにはやんわりと、でもはっきりと伝えるようにしています。

「家族以外とは話ができない障害を持っています」
「少しだけ家族で話せるように、お時間もらえますか」と。

場面緘黙症は障害ではありませんが、まだ認知度が低く、
単に「家族以外とは話せません」というと、
ただの緊張屋さんというか、性格だと思われてしまい、年齢が上がるにつれ、
マナーがなっていない、しつけがなっていない、と思われかねません。

どうしようもない症状なのだ、ということを分かってもらいたくて、
敢えて障害という言葉を使っていますが、複雑な心境でもあります。

理解ある店員さんが、距離を取って見守っていてくれましたが、
結局この日は選ぶことができませんでした。

ですが、店員さんが理解してくれたおかげで、
気に入っていそうなデザインのフレームを数種類かけた顔を写真に撮って、
自宅で選んでから後日再度来店することを、快く承諾してくださいました。

メガネを手に入れるのも、一苦労です・・

メガネデビュー

かわいいメガネが出来上がりました!

ですが、やっぱりちょっと恥ずかしいのと、煩わしいのと。

積極的にかけようとはしてくれません。

こちらも少しずつ慣れていく必要があるみたいなので、
まずは時間を決めてメガネをかける練習から。

・学校で勉強する時だけ
・家ではテレビを見る時だけ
のように時間を決めて使っています。

わたしの期待通りにメガネを作って学習スピードが飛躍的に上がった!
なんてことはもちろんありませんが、
少しでもストレスなく見えていると信じて。

目の見え方は、その人にしか分かりませんよね。
視力の良かった子どものころ、視力が低下した状態って、
どんな風に見えているのか想像もできませんでした。

『視力がこのくらいで、こんな風に見える』とか、
『乱視って文字がこんな風に見える』とか、
そんなものを客観的に疑似体験できるようなものがあればいいのになと思います。
自分のことを伝えるのが苦手な娘の見ている世界が、
視力の低下でどのくらいの「やりづらさ」を抱えているのかが分かれば、
そもそもメガネをどうするかとか、
どのくらいの大きさの文字ならはっきり見えるのかが分かって、サポートがしやすいのに。

視力だけではなくて、色んな困難を疑似体験できれば、
もっと理解が進むと同時に、その困難を軽減するためにできることを、
もっと周りが考えてあげられる。

ゲームの世界ではVRも広まってきていますが、
障害福祉の世界でも、
VRやAIなどの技術がより広くより深く浸透すれば
バリアフリー化がもっともっと進むような気がします。

ここまで話題が展開できるとは、
自分でも驚きですが、
ほんとたかが視力検査、されど視力検査ですね!

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