療育日記

療育っ子の小学校選び

~就学先決定までの道のり~

普通級?特別支援学級?それとも特別支援学校?

3月に入り、卒園・卒業が近づくこの季節。

昨年の今頃は、娘の卒園と小学校就学という節目に、長かった療育生活や色々な想いの詰まった幼稚園生活を振り返ったり、新生活への期待と不安が入り乱れる、なんとも忙しない時期だったと思います。

それからようやく1年が過ぎ、在籍する小学校を決めるまでのことを振り返ってまとめたいと思います。

就学先決定までの流れや、各学級の違いなどについては
就学先を決めるまで」に詳しく掲載していますので、そちらをご覧ください。

本記事では、我が娘が実際に就学先を決めるまでにやったこと、考えたことなどを中心に綴っていきたいと思います。

目次

行ってよかった!年中での学校見学

年中というと、就学まで1年以上もありますが、就学を控えた年長の時だと、時間に限りもあって、たくさんの学校を見に行くというのは難しいと思い、時間と心に余裕のある年中の時に、いろんな小学校を見学に行きました。

年中の時点で、わたしの心の中では、「通級もしくは特別支援学級」の選択肢しかなかったように思います。

そのため、
①就学が予定されている地域の小学校
②そこから通うであろう通級クラス
③特別支援学級を1つの学校のようにした大規模な特別支援学級
④住んでいる地域を問わない小規模特認校

この4校を見学に行きました。

①就学が予定されている地域の小学校

1年生の教室と、特別支援学級の教室を見学させてもらいました。

見学に行ったのが5月ということもあって、新1年生の子どもたちはソワソワしていたり、チャイムが鳴っていても廊下を走っていたり、まだまだかわいいなぁという印象。

1年生だからちゃんとできています!という感じではなくて、「もしかしたらうちの子もやっていけるかも⁉」と思った記憶があります。
何しろ卒園まであと1年以上もあります。
どんな風に成長するか、まだ分かりませんしね。

②そこから通うであろう通級クラスを開設する近くの小学校

就学先を決めるまで」に詳しく掲載していますが、通級クラスは地域の小学校に開設されていなければ、開設している小学校まで出向いて授業を受けます。

地域の小学校に在籍しながら、通級クラスに通うことを想定して、なるべく連れて行きやすい近くの小学校に見学に行きました。

見学に行った通級クラスでは、完全に個室になった学習室、そしてその前で親が待てるスペースなどがあり、とても良い印象でした。

質問にも丁寧に答えてくださったり、ここなら安心して通級に通えるな、と思って学校を後にしました。

③大規模特別支援学級

特別支援学級を1つの学校のようにした大規模特別支援学級、と書きましたが、ここは全国的に見ても、あまり一般的ではないので参考にならないかもしれませんが、ご紹介します。

ある小学校の特別支援学級が、
1つの学校のように、
1つの校舎を構えて、
市内から希望者を受け入れるシステムの特別支援学級です。

なので、多くの特別支援学級は、複式学級と言って他学年と同じクラス、教室で学ぶことが多い中、1年生だけのクラスが数クラスあるため、特別支援学級だけれども通常学級に在籍しているような学校環境で学べる、という利点があります。

それでいて支援教育を受けられるため、印象は最高でした。

④小規模特認校

住んでいる地域を問わない小規模特認校と書きましたが、
具体的には山間部など児童の少ないエリアの小学校では、校区以外からも入学希望者を募集している学校を指します。

もともと児童数がとても少ないため、通常学級でありながら、少人数のクラスで授業を受けることができる利点があります。

人数が少ないと先生の目も行き届きやすい。
多少の困り感があったとしても、サポートを得やすいのではないか、と考え大きな期待を胸に見学に行きました。

自宅からは遠いですが、自然豊かな環境でのびのびと学校生活が送れるのではないか、と思いました。

いよいよ年長! ~親の心境の変化~

1年ってあっという間に過ぎますよね。

ついこの間まで年中だったのに、もう年長・・
娘は年上のお世話が上手なお姉さんが大好きです。
困っているのを見ると、すぐに来てくれて、優しく手伝ってくれるお姉さん。
でももうそのお姉さんたちはいません。

自分たちが一番年上だというプレッシャーを抱えての年長への進級、多くの子どもたちが緊張と不安を感じるそうです。

そして特に娘は、【進級】がとっても苦手です。

3月の年度終わりは、往々にしてとても調子が良いのです。
1年近く同じメンバーで過ごしているので、なんだか自信を持って過ごしているような印象です。

ですが春休みを挟んで、進級した途端、1歩どころか何十歩も後ずさりをするように、緊張し小さく固まってしまいます。

小さな幼稚園、担任の先生は変わりますが、メンバーだって変わりません。

それでも苦手なんです。

そんな何歩も後退してしまった時期に、やってくるのが就学前の発達検査。

‣就学前の発達検査は5~6月頃がピーク

発達検査イメージ

発達検査は、その精度を保つために、前回の発達検査から概ね1年、間をあける必要があります。

そして前回の発達検査の時期にもよりますが、遅くとも夏が終わるころには就学前の発達検査が完了している必要があります。

それは9月頃には、来年度の新入生の名簿を作成したいという教育委員会の意向があり、多くの場合それまでに就学先を決めるようにという暗黙のルールがあるからです。

11月頃には就学先で、就学前健診がありますよね。
教育委員会はこの就学前健診の時点で、それぞれの学校の入学予定児童を把握しておきたいようです。

娘の場合は5月に発達検査を受けました。

結果は、前回の発達指数を大きく下回る結果で、唖然とした記憶があります。

「この子の持っている能力を十分発揮できていないように思います」

本当はもっとできるはず。
親としては本来の能力が発揮できていない数値に、納得したくはないのです。

*発達検査について詳しくは
発達検査について」に記載していますので、そちらをご覧ください。

上述の「発達検査について」で詳しく書きましたが、検査という“気分が乗らなくても、やらないといけない状況”で、能力を発揮できない、取り組めないということ自体を、きちんと受け止めてあげないといけなかったんですね。

これを踏まえて、年長での学校見学が始まるわけですが、年中の時とは違って、
「今の娘が実際ここに在籍していたら」
という視点で、学校を見学します。

これには1年前とは違ったものが見えてきました。

年長での小学校見学

①地域の小学校

ここでまず強く思ったのが、休み時間が高いハードルであるということ。

ご存知の通り小学校では、休み時間の間に、
・トイレを済ませる
・次の授業の準備(教室の移動など)
などを自発的にしなければならず、かつ休み時間の過ごし方を自分で決めるというか、自由な時間をうまく使う必要があります。

娘は他の人がたくさんいたり、並んだりしないといけないトイレに、一人で行くことができません。

また、「自由な時間・自由遊び」、「見通しを持って自発的に(準備する)」ことなども苦手です。

仲の良いお友達に誘導してもらってできることもありますが、幼稚園と違って小学校は同級生といえども知らない子の方が多い環境。

そんな環境で、この「休み時間」をうまく乗り切ることはできないと思いました。

それは給食の時間もしかり。

4限目が終わったら、手を洗い、給食の準備をする。
配膳トレーを持って並んだり、それを席まで持って行って、みんなと一緒にいただきます、これも難しい。

あれ?
1年前と受け取り方が全然違う。

ここで出た結論は、
「普通学級に在籍する通級ではなく、支援学級の方が良いだろう

そんな思いから、1年前よりも支援学級を中心に見学しました。

見学したその年の校長先生が、とても良い先生で、いつも支援学級の子どもたちに寄り添い、声をかけ、時には手をつないで校舎を散歩していたり。

支援学級について質問した際も、親身に話を聞いてくださり、
「お母さんも自分の時間を大切にしてください」と声をかけてくださり、思わず涙がこぼれた思い出があります。

*後に判明することですが、この素敵な校長先生、娘が就学する年に異動になってしまいます。
公立の学校ではやむを得ないことですが、就学先を決める時期に相談していた先生、支援学級の先生は異動により、我が子の就学後にはいらっしゃらない、という事態もあるのです。

②通級クラス

見学には行かないことにしました。

*後に分かったことですが、1年前に見学に行った通級クラスのある学校が、建て替えをすることになって、校舎の場所が変わることに。
直前に分かる学校事情もあるのです。

③大規模な特別支援学級

こちらは以前から魅力を感じていたので、再度見学に行きました。

授業の様子を見て、最初に気付いたことは、
「支援教育だけど、常に集団での活動であること」です。

みんなで声に出して言ってみましょう、
みんなで歌いましょう、

学校で見かける自然な姿ではあるのですが、支援学級で在籍児童の人数も多いので、「みんなで」の割合が高く、色んな理由で参加できない子にしっかりとサポートがあるように見えなかったんです。

ここに娘が在籍していたら。
1年前にどうして気が付かなかったのでしょう。
娘は大人数が苦手じゃないですか。

先生と生徒の割合は、特別支援学級なのでその範囲を超えることはないのですが、日々の学校環境が自分で書いていますが「大規模」なんです。

そんなわけで、
ここも娘にはハードルが高い、と判断。

④小規模特認校

漠然といいなと思っていたこの小規模特認校。

ここは在籍児童が少なく、規模が小さいとはいえ、ここは普通学級です。

その事実から、ここも候補からは外れました。

特別支援学校という選択肢

1年前には心にあまりなかった選択肢でした。

いろんな先生や支援の方とお話していくうちに、
見学には行っておいた方がいい、そう思うようになりました。

相談をした先生でも、意見が分かれていました。

「特別支援学校もいいかもね」という先生。
「特別支援学校はもったいないよ」という先生。

その割合は半々くらいでしょうか。

ただ迷っているだけでは決まらないので、見学に行くことにしました。
当初、正直に言うと特別支援学校という選択肢を無くすために、娘には合わないと思うために見学に行ったように思います。

見学に行って最初に思ったことは、
校舎がゆったりとしていて、廊下ですれ違う先生や生徒の穏やかさというか温かさというか、何とも言えない優しい空気感。

特別支援学校はここしか立ち入ったことはなく、わたしの勝手な個人的な感想です。

そして授業などを見学していると、
なんとも娘によく似た雰囲気の女の子を発見。

その子と接する先生の対応の一つ一つに、納得と共感。

ここに娘が在籍していたら。
もしかしたら娘に望む支援を不安なく受けられるのではないか。
もしかしたら娘の発揮できない能力も引き出してもらえるんじゃないか。
そう思いました。

小学校見学の後は個別の相談

‣地域の特別支援学級との面談

さて、小学校見学が一通り終わり、
この時点でわたしと夫の意向は「地域の小学校の特別支援学級」にほぼ決まっていました。

特別支援学校はとても良かったけれど、将来の進路を狭めてしまうことになるかもしれない、という心配がどうしても消えませんでした。

特別支援学級で、娘に望む支援内容をまとめて、夏休みに入る直前、教頭先生に面談を申し出ました。

こちらも「就学先を決めるまで」で触れていますが、
結果として期待も希望も粉々に砕けました。

それでもしばらくは、いざ就学したらちゃんとやってくれるだろうと信じ、そのまま意向決定報告をしようと思っていました。

ですがやっぱり迷いが消えず、そんな中お世話になっていたポーテージの先生の言葉に動かされました。

それは
「トイレや給食などの“生活面”での支援は、特別支援学級では難しい」
という内容でした。

特別支援学級というのは、“学習面”での支援が中心であって、生活面での支援が必要な場合は、暗に特別支援学校に行ってほしい、という学校の本音があるというのです。

娘の場合、トイレも食事もほぼ自立していましたが、それはとても環境に依存していて、学校でできなければ「できない」なんです。

能力は発揮できて初めて「できる」と言える。

遡りますが、先に受けた発達検査の結果が既にそれを物語っていたんです。

‣教育巡回相談の担当の方に迷いを伝える

「特別支援学級と特別支援学校で迷っている」

地域の特別支援学級での個別面談は終わっていたので、その結果を報告し、迷いを伝えました。

すると、特別支援学校には就学相談という窓口があって、就学先を問わずに支援教育のスペシャリストである特別支援学校の先生に相談できるということを知りました。

‣特別支援学校での面談

早速特別支援学校の就学相談を申し出て、面談をしてもらったところ、相談担当の先生が娘の幼稚園での様子を見に来てくださり、本当に親身に、そして発達に関しても専門家としての意見を頂きました。

それは今まで学校見学に行ったり、面談をしたり相談をしたりした経緯の終着点のように、迷っていた気持ちがスッキリと晴れたのです。

就学先決定の結論 ~娘の場合~

娘には特別支援学校が良い

娘にとって豊かな人生とは、
きっと勉強ができるようになることよりも、
自分の持っている能力をどこでも、誰にでも発揮できること。
自分に自信を持って、自分らしさを発揮できること。

それには
心から信頼できる大人が常に傍にいる環境で、
やりたいけれどできない自分も丸ごと受け止めてくれる環境で、
何度でもトライするチャンスをくれる環境であること。

もっと言えば、
学力を付けるよりも、
まず抑制的な気質である場面緘黙症を克服してほしい。

それには特別支援学校が最適である、と判断したのです。
もちろん娘に知的な遅れがあるのが大前提です。

何となく感じて知っていましたが、
娘は一見大人しくて、周囲のお友達や大人が困ることはあまりないのです。
ただ本人が固まってしまって、参加できないことで、困っているのは何となく本人だけ。

それにてんかんも持っています。

人数の多い地域の学校に行ったとして、
ただ大人しく参加しないだけの、てんかんを持った娘に、どれだけの“参加するための支援”が受けられるでしょうか。

支援員さんを含め、支援教育に関わる先生が足りない中、そんな娘に差し伸べられる手は現実問題として少ないと思いました。

それでは学校生活そのものが、とても辛いものになってしまい、身につくことも身につかない、自分に自信なんて持てないまま大きくなってしまう。

特別支援学校に行くより学力は付くかもしれませんが、娘らしさはずっと殻に閉じこめたままのような気がしました。

もう一つ思ったことは、
・信頼できる大人との関わりや、お友達との関わりを学ぶことと、
・学力を身に付けること、
このどちらかを学校以外の場所に求めた時、どちらがより簡単に手に入るかというと、学力を身に付けることなんです。

学力は、気力やモチベーションがあれば何歳からでも取り返せます。
塾や家庭教師、通信教育、いろんな代替え方法がありますが、
信頼できる大人やお友達との関わりは、学校以外に求めるのはとても難しい。
そう思ったのです。

こんな経緯を経て、娘の就学先を特別支援学校に決めたのです。

最終的には教育委員会が就学先を決定する

就学先を決めたのです、と先述しましたが、
正確には「就学先の希望を伝えた」にすぎません。

巡回相談の担当の方に、
親の希望する就学先として報告します。

この際、
どういった経緯で(どの学校の見学に行ったか、面談をしたか、など)、
どういう理由で、
その学校を希望しているのか、を熱く語りました。

特に、地域の学校での教頭先生との面談の様子はつぶさに伝えました。

この後、教育委員会と発達の専門家で構成される評議委員会というところで、個々の児童の就学先が審議されます。

巡回相談の担当の方は、親の希望や思いをこの評議委員会に届けてくれる存在ですので、精一杯伝えました。

そして最終的には
「教育委員会が決定した就学先について異議を申し立てることはできません」と言われながら、通知ハガキを待つことになります。

娘の場合、幸い希望通りの就学通知書を受け取ることができました。

ちなみに希望と違う就学先を決定付ける通知が来たとしても、まったく申し立てができないわけではないようです。

教育委員会としては、一度審議したことについてはなるべくその結果に従ってほしい、という本音があるとは思いますが、我が子の就学先を選ぶ親にとってみれば、引くに引けない想いがありますよね。

まとめ

「就学先を決めるまで」にも書きましたが、
通常学級、特別支援学級、特別支援学校の中から就学先を決める際、大まかには発達指数による線引きがあるとされています。

もちろん発達指数によっては、2つの選択肢どちらでも、というケースも多いと思います。

ですが、発達指数とはできること、できないことを数値で単に表しているだけなので、その子の持つ性格とか気質とか、そういったものは含まれてないんですよね。

娘と同じ発達指数だったとしても、自分を表現する力があってお友達と関わるのが好きというお子さんなら、特別支援学級でも、もしかしたら通常学級でも、学力を付けながら良い所を伸ばせるかもしれません。

そんなお子さんなら逆に特別支援学校では、持っている能力を最大限に伸ばしてあげることはできないのかもしれません。

就学先を決めるとき、
我が子の気質や得手不得手を一番よく知っている親だからこそ見えてくることがたくさんあります。

娘と同じ年に就学を迎える、同じく療育っ子を持つママが、
「自分の進路を決めるときより悩んで大変だった」と言っていました。

すごく共感できました。

自分が悩みに悩んだ末に導き出した就学先という答えを、時に反論してくる人たちを説得させながら結論付ける。

なかなか大変な作業です。

だから希望通りの就学先決定のハガキを受け取ったときの安堵感は、例えようがありませんでした。

就学先の決定はゴールではなくスタートラインです。

就学後は親子で1年生。

手をつないで、
前を向いて、
安心して通える学校。

ここを訪れてくださった皆さんも、そんな学校にきっと出会えますように。



 

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